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【レンズ】Carl Zeiss Apo Sonnar T* 2/135 ZE 素晴らしい解像感

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Carl Zeiss APO SONNAR T* 2/135

ツァイスのレンズネタが続きますが、今回はカールツァイスのアポゾナーF2 1350mm ZE(Canon EFマウント)を紹介します。
解像度の良さ、色収差や球面収差がゼロ、というとにかく描写性能の評価が高かったのと、筒丸々レンズ(隙のない)作りの見た目にも惚れ込んでしまい、それまで使っていた中望遠 Canon EF135mm F2L USMの代わりとして2020年2月ごろに個人輸入で米国から購入。

2013年7月25日に発売、現在生産終了で後継機種にMilvusというリニューアルされたモデルが取り扱われてますが、これはそのリニューアルの1つ前のモデルです。

鏡胴もフードも金属製、MF(マニュアルフォーカス)のみ、全長107.8mm、最大径84mmと単焦点ながら大砲っぽさがあって所有感を十分に満たしてくれる質感です、クラシックレンズというカテゴライズされるシリーズのようですね。

現代のミラーレスマウントの設計に特化したレンズだと、電子補正ありきで軽く、できるだけコンパクトに収めて爆速オートフォーカス、という仕様で、それはそれで扱いやすいんですが、このアポゾナーは光学設計だけで収差などを驚くほどに潰してくれてます。

ツァイスには伝統的なレンズ名称が色々ありますが、レンズ構成によって異なるみたいですが、、気になったのでちょっと調べてみました(今まであまり知らずに使ってきた…)。

Sonnarデザイン

ゾナー(Sonnar)は、ツァイス・イコンのルートヴィッヒ・ベルテレがエルノスターを改良して1929年に発明したカール・ツァイスのレンズである。名称の由来はツァイスの工場が郊外にあった都市ゾントホーフェン(Sonthofen)から来るという説と太陽を意味するドイツ語(ゾンネ、Sonne)から来るという説の2つの説が知られる。

【中略】

張り合わせによる、枚数の割に群数の少ない構成は、レンズコーティング以前の時代には反射率の高い空気-ガラス面が少ないことから4群6枚のダブルガウス型より好まれ、また大口径化も進んだ。しかし後群のレンズが後方に伸びていることにより、一眼レフカメラにおいてはミラーに干渉するという問題を生じ、コーティング技術も発達したことと、特にダブルガウス型においてバックフォーカスを長くとれる処方が確立されたこともあり、一般にF1.4前後の大口径に設定されるレンズ交換式一眼レフカメラの標準単焦点レンズについてはゾナータイプは見られなくなった。

Wikipedia - ゾナー

当時、コーティング技術がまだ発達してない時代では3群構成で空気境界面が少ないことでコマ収差が抑えられたり、プラナーに比べ高コントラストな描写を可能にしたみたいです。 そして後方にレンズが伸びてしまって一眼のミラーに干渉する問題は、ミラーレス時代になってまた使われる機会が増えそうに思えます。

Apoの称号

接頭辞に「アポ」がつくレンズの名称はツァイスに限らず目にして来たんですが、どんな意味があるんでしょうか。。
調べてみると色収差を防ぐレンズ設計に関係しているのだそう。

アクロマート

アクロマート(Achromat)とは、2色に対して色収差を補正したアプラナートを言う。

眼視で使用する場合、C線とF線について軸上色収差を補正し、d線で球面収差とコマ収差を最小にするC-d-F補正が普通であるが、天体望遠鏡では暗い対象を見ることが多いのでe線球面収差とコマ収差を最小にするC-e-F補正が合理的である。

通常の写真乾板は肉眼と比較して青色から紫色に敏感であったので、以前の写真用レンズは、d線とg線について軸上色収差を補正しF線で球面収差とコマ収差を最小にするd-F-g補正が普通であった。こうすると肉眼で決めたピント位置そのままで撮影できる。

写真星図ほか天文学に使用する天体写真撮影の場合は、1989年時点でも通常の写真乾板が多用されていたため、数が多い青白い星に合わせ、F線とh線について軸上色収差を補正し、g線で球面収差とコマ収差を最小にするF-g-h補正としており、これを「天体写真色消し」という。

Wikipedia - アクロマート

アクロマート

凹レンズと凸レンズを合わせて色収差を補正する技術らしい。
このレンズを使うことで2波長の補正ができるみたいだけど、補正しきれない色収差(2次スペクトル)がまだ残ってしまっています。

2次スペクトルをも補正するのが次のアポクロマート設計になるよう。


アポクロマート

アポクロマート

アポクロマート(Apochromat)とは、本来「3色に対して軸上色収差を補正し、そのうち2色についてアプラナートになっている望遠鏡対物レンズ」のことである。

カール・ツァイスのエルンスト・アッベが命名したが、その後光学ガラスの発達により不明瞭となり、一時は「3種類のガラスを使い色収差補正をアクロマートより向上したレンズ」という意味となりまた写真レンズや望遠鏡でも使用されるようになった。その後異常分散レンズや蛍石レンズの発達により2枚構成の対物レンズでも本来の「アポクロマート」の意味以上の補正状態を実現できるようになった。また1989年頃には4色以上に軸上色収差補正をした製品も現れており、4色補正したものをスーパーアクロマート、5色補正したものをハイパーアクロマートと呼ぶ人もいる。

Wikipedia - アポクロマート

蛍石レンズなどを使うことで2枚構造のままで「アポクロマート」の効果が実現できているみたいですね。
ツァイスではこのアポクロマートの補正設計だけに限らず、高性能のレンズにApoを付けているようです。

まさにこのレンズは冠を与えられているんですね、というわけでとにかく高性能なのです。

ちなみに、 T*はTスターコーティングと呼ばれるようで、乱反射によるゴースト、フレアーを防ぐコーティング技術を採用しているっていう意味だそう。。

ドイツの諺で「星には真実がある」というのもあるらしい。

レンズを見ていく

前置きが長くなってしまった。

Carl Zeiss Apo Sonnar T* 2/135 ZEのスペックを見ていきたい。

仕様

画角(水平・垂直・対角線) 18,7° / 15,6° / 10,5°
レンズ構成 8群11枚
絞り羽根枚数 8枚
最小絞り f22
最短撮影距離 0.80m
フィルター径 77mm
最大径×長さ φ84mm×108mm
質量 930g
最小絞り 268°
発売日 2013年 7月

レンズ構成

レンズ構成

MTF曲線

MTF曲線

何度も言うが中望遠とはいえ、単焦点なのにデカい、重い。
そして、レンズの有効径が本当に大きい、鏡筒がほとんどレンズで埋め尽くされているよう。

フロントF2解放時

フロント、絞り解放F2時。

リア側

電子接点は持っているので、Exifデータは残る、フォーカスガイドもEOS R系なら出てくれるので助かる。
フォーカスリングを回すと後方レンズもレンズ内部に移動する設計。

Canon EOS R5にマウント

RF - EFマウンターを挟むので更にコンパクトさは犠牲になる。
フードも前方に突き出しているタイプで、つけると更に1.4倍長くなった感じに、、ただ金属製で質感がすごい良い、重い。

EOS R5 meets Carl Zeiss APO SONNAR T* 2/135 #1

最短距離側ににフォーカスを合わせるとズームした時のように伸びる。

EOS R5 meets Carl Zeiss APO SONNAR T* 2/135 #2

ヘリコイドの動きは個体差はあるだろうが、軽過ぎずスムーズで良い、268度まで回るので微妙なピントは合わせやすいが、最短から無限遠(∞)へは瞬時に合わせるのはちょっと大変。

EOS R5 meets Carl Zeiss APO SONNAR T* 2/135 #3

とにかくこのレンズ面構えがいいんです、、描写性能と相まって本当にお気に入りのレンズです。
前方のアルミのシルバーがなんとも良いアクセントに。。

自分はあまり星を撮ることはしないんですが、星景撮影する方からも評価が高いみたいですね、「天体望遠鏡」などとも呼ばれているみたいです。

では作例を見ていきたいと思います。

作例

ボディはEOS RかEOS R5を使用。
季節は冬、春先、梅雨とバラバラです。 WBは全てオート。 RAW現像はレベル補正、WBを少しいじっているだけ、トリミング処理は2~3枚で他はそのまま。

東栄信用金庫

EOS R, 1/250s, f/2, ISO640

最初にこの写真なのですが、、伝わりますでしょうか。。
なんてことない東京都立石のアーケード商店街を移したものですが、これを現像画面で見たときベタな言い方ですと「空気感」っていうんでしょうか、今までのレンズにない写りでした。
本当になんてことない写真なのですが、何もしてないのにHDR処理を施したような(ボキャ貧ですね…)。
ボケを強調した構図でもないのに画の浮かび上がり方というか、驚いた記憶があったので最初に持って来ました。


ユスリカ

EOS R, 1/320s, f/2, ISO50

冬のユスリカ、、いつもの自分の撮影スタイルですと、この画角でここまで細かいものを収めたい時はもっと絞っているはずです。
この時は絞るのを忘れていたので、あまり考えてなかったのか開放でしたが、意外にシャキッと写っていました。


チーズの上に猪の頭

EOS R, 1/100s, f/2, ISO50

猪の剥製 on the cheese.


桜

EOS R, 1/2000s, f/2, ISO50

アネモネ

EOS R, 1/500s, f/2, ISO50

エリカ

EOS R, 1/320s, f/2, ISO50

チューリップ

EOS R, 1/1000s, f/2, ISO50

スイートアリッサム #1

EOS R, 1/800s, f/2, ISO50

スイートアリッサム #2

EOS R, 1/800s, f/2, ISO50

ツワブキの種

EOS R, 1/200s, f/4.5, ISO50

ばら

EOS R, 1/400s, f/2, ISO50

ユリ

EOS R, 1/1600s, f/2, ISO50

大輪キンシバイ

EOS R, 1/640s, f/2, ISO50

中望遠を生かしてクォーターマクロ的な扱いもできます。
どのボケもうるさ過ぎず、しっとりしていて良好です。

ダリア

EOS R, 1/800s, f/2, ISO50

晴天の元での撮影、、鮮明さに相まってカリッとした色が出てくれます。

アジサイ

EOS R5, 1/1000s, f/2, ISO100

八重桜

EOS R5, 1/320s, f/2, ISO100

マヌカ

EOS R5, 1/500s, f/2, ISO100

ヤグルマギク

EOS R5, 1/250s, f/2, ISO100

ハマウツボ #1

EOS R5, 1/400s, f/2, ISO100

ハナショウブ #1

EOS R5, 1/400s, f/2, ISO100

ガーベラ

EOS R5, 1/800s, f/2, ISO100

ハマウツボ #2

EOS R5, 1/320s, f/2, ISO100

アヤメ

EOS R5, 1/320s, f/2, ISO100

コデマリ

EOS R5, 1/1250s, f/2, ISO100

千客万来

EOS R, 1/250s, f/2, ISO1600

感想

隙の無い高い品質のレンズであること十分に感じる頃は出来ました。 画角的にあまりメインにはならない、重すぎる、、と決して扱いやすい玉ではないのですが、AFなしを割り切れてこの大砲の重さにも不満がない方であれば、おすすめしたいレンズです。
Canon EFマウントの他にもNikon Fマウントがあります。

発売当初はまだCanonもNikonもミラーレスには本気で参入してなかった頃のレンズですが、安価ではないかもですが中古でまだ数多く出回っている方かと思います。